ワークショップ1

靴屋の愛 魚の革づくり奮闘記 vol.1


靴屋の愛

「何の革つかっとるが?」

オーダーメイドの靴を作っている私にお客さんはよくこう聞きます。私のお店で使っている革のほとんどが牛で、生後6ヶ月のカーフから1年以内のキップ、2年以上のステアなど、牛でも種類が色々とあります。

その他にも靴作りに使う革といえば、馬、羊、ヤギ、鹿、猪、豚、高級な革になると、クロコダイルやオーストリッチがあります。うーん、魚の革がない!


 

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私の住んでる氷見は田舎の小さな港町です。昔から定置網漁が盛んで、年間を通していろんな種類の魚が獲れます。なかでも鰤はブランド化されるほど美味しく、氷見と聞くだけではそれがどこだか分からないけど、寒鰤の獲れる所と言えば、わかってもらえるくらいです。
そんな魚の革、特に”鰤”で靴が作りたい!私の想いを漠然と友人の高野さん(アートNPOヒミングスタッフ)に話していたものの実行する事もなく、時は流れ、2015年それは動き始めることとなるのです。

 


ワークショップ2

2015年4月20日に氷見市に漁業文化交流センター「魚々座」がオープンする事となり、そこで氷見市民が提案する、海や漁、魚などに関連のあるやりたい事をヒミングのもの作り工房でバックアップしてくれる事となったのです。
私一人だけで魚の皮を鞣して革にするだけでは面白くないだろうし、いろんな人を巻き込みながらやっていけたら楽しいだろうな~という気持ちもあって、魚の革を作ってその革でサンダルを作ろうというワークショップ形式にして、みんなでわいわいとやっていこうという事になりました。

ワークショップ1

ワークショップを始めるには材料の調達、魚の皮集め。幸い私の周りは漁師さんや、お魚やさん、お鮨やさんに民宿、それにトレジャーボートを持った釣り好きのおじさん達などがいて、魚の皮を入手しやすい環境です。そう考えると氷見には海の恵で生活している人達がたくさんいるなあ~と改めて実感する。


魚々座に来るおじちゃん、おばちゃん達に魚の皮が必要で欲しい事を伝え始めてから数日後、高野さんからの電話「あいちゃん!前田さんが(釣り名人)魚釣ってきたー、くれるみたいやから包丁持ってこられ!急いで!」

やったー!ついに魚の皮が!!私は興奮しながら包丁をタオルに包み(ここのくだりだけだと怖い(笑))自転車をめっちゃこいで魚々座に向かった。

魚を捌く気満々だった私(ほとんど未経験なのに)着いてみたら時すでに遅し、魚は丁寧に捌かれ、あ~残念、ちょっぴりしょんぼりしていた私の目の前には刺身!食べていいよと言われ、あっという間にテンションは戻り、皮そっちのけで刺身を食べる。今回いただいた魚は黒ソイ、高級魚だ。白身で弾力があり、さっぱりとした甘みがあった。「美味しい!!」私はこれからやってくるであろう刺身いや、魚を思うと嬉しくて、なんて楽しいプロジェクトなの~とわくわくした気分であった。まさかこの先いろんな困難がやってくるとも知らず・・・。

さしみ
それからお鮨やさんの川喜さんが平目の皮を持ってきてくれたり、魚を毎日食べているおじさんが皮を持ってきたりと、だんだん皮も集まってきた。ある時は野寺さん(釣り名人)から「黒鯛がたくさん釣れたから取りに来られー」と電話をもらい船つき場まで取りに行き、そこで生きている魚を血抜きするのを初めて見た。ばたばたしている魚をぎゅっと強く掴み魚のエラ部分に棒を刺す、すると魚は一瞬硬直して動きがぴたりと止まる。命の終わり。ただただ申し訳ない気持ちと感謝の気持ちがどっと溢れ出て、自然と合掌していた自分がいた。無駄にすることなく、食べ尽くし、使い尽くすぞ!と強い気持ちがぼわっと湧いた。


さあいよいよ鞣し作業だ。鞣すといっても、誰もが初めての事、素人集団!チーム魚サン(魚のサンダルを略してます)と名前をつけ、活動開始。

皮なめし1

まずはネットで魚の鞣し方を調べ、その通りにやってみることに。やり方は簡単、まず濃い緑茶を作ります。冷めたら皮を入れ、数日間漬け置きしておく。いわゆるタンニン鞣しという方法です。牛の皮を鞣す方法のひとつで、植物のタンニンが皮を腐りにくくし、しなやかにすると言われています。今回私達は1週間漬けてみました。

皮2

それから取り出し水洗い、皺にならないように伸ばしながら、板に釘で皮を貼りつけ乾燥作業です。

皮なめし3

 

皮なめし2

あれ、いやな予感、魚の匂いあまりとれてないかも。とりあえず乾燥が終わってからどうなっているか・・・匂いとれててーと願いつつ不安と期待を胸に作業終了。二週間後、乾燥も終わり恐る恐る匂い確認。なんとなく匂いが無くなっているような、でも自分の鼻が魚の匂いになれてしまっただけのような。メンバーそれぞれに匂い確認、「におうね・・・、魚だね・・・」「におうかー、そうかーどうすりゃいいのー」 ひとつ目の問題発生。

 

その上、皮の質感がとても硬くてぱりぱりしている、柔らかくするためにオイルを塗る、とあったので、オリーブ油や革用クリームのラナパーを塗ってみる。しかし市販されている革のようなしなやかさからはほど遠く、これが二つ目の問題となる。

皮1

この二つの大きな問題を解決していく為に、これからさまざまな挑戦が始まるのであった。

(つづく)