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〔カブスゲストノートVol.1〕 網編みから見る氷見


〔カブスゲストノート〕とは、外から氷見を訪れた人がつづってくれる寄稿コラムです。

Matsushima Mami

これから書くのは、千葉県在住の私が2015年11月に氷見に16日間滞在し、ほぼ毎日を「魚々座(ととざ)」で過ごした記録です。

近ごろバッグを作っている私は、地方独自の技む術や素材を使って作るのも面白いかも…と漠然と考えていたところ、ちょうど、昔の友人がアートNPOヒミングという団体で氷見に根付いた活動をしているらしい、そして魚々座という所で漁網を編むワークショップをしているらしい、と知り興味を持ちました。

そこで勉強と制作を目的に2週間ほど氷見に滞在しようと、さっそく北陸新幹線とバスを乗り継ぎやって来ました。雨が降って強風が吹き、商店街の旗がばたばた音をたてている夜に氷見に到着したところから私の滞在が始まります。

魚々座へ向かう

翌日、さっそく「ひみ漁業交流館 魚々座」へ。

魚々座とは、かつての氷見の道の駅を改装し、漁業文化を通して氷見のことを伝える場所。この一画にヒミングの工作室があり、氷見の海や民俗(暮らし)に関連するワークショップを開催しています。そのひとつとして漁網の編み方(正確には、現代の漁網は機械編みなので修繕時の編み方)を随時希望する来館者に教えているのですが、私はそれを習いたくて(そしてその技術をバッグ作りに使えないかと妄想しながら)魚々座にやってきたというわけです。

また、魚々座では「そらあみ」といって、氷見をイメージした色鮮やかな紐で、沢山の人が大きな網を編むプロジェクトがあり、入り口にはその大きな作品がかかっています。だいだい・緑・水色がとてもキレイ。

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黒色に塗られたシックな館内に入ると、天井から定置網(本物なので巨大!)が大胆にかかっており、人々は定置網の中にいるという不思議な状態となります。それにしても、魚々座は全体的にオシャレ。東京都市大学の手塚建築研究室の監修のもとに改築、グッドデザイン賞も受賞したとのこと。地方の漁港の街のイメージとはまた違った現代的な施設という印象です。

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網編み

まず、漁網の編み方を教えていただく先生にご挨拶。先生は、ヒミングスタッフの荒川さん。荒川さんは元漁具屋さんで、魚々座ではその知識を活かし漁師が使う編み技やロープワークなどを教えています。

荒川さんに、私が氷見で学びたい事・作りたい物について説明。(優しそうな先生で良かった!)そしてついに念願の網編みを教えていただけることに。

使うのは、コマと網針(あばり)。コマとは網の目の大きさを決める物差しで、網針は紐が巻き付いた竹製の針。左手にコマ、右手に網針を持って、左から右に編んでいきます。初めてなので、紐のあやつり方をつかむまで少しかかりましたが、手が覚えてしまえばその繰り返しです。

キレイな色の紐なのでカラフル好きな私は楽しい気分で集中モードに突入。

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しかし慣れたつもりで調子に乗っていると、編み目を取り残したまま折り返してしまったりして、初心者にはまったく油断ができません。網編みは小学生でも参加できるのですが、逆に柔軟性が衰えている大人の方が難しかったりするのかもしれません。

オッパイ針とうぐいす徳利

始めるとつい没頭してしまうのですが、館内の展示も見てね、と荒川さんに言われ、ハッと現実に戻り(笑)気分転換に館内散歩へ。

館内には氷見の各家庭から集めた漁業に関する沢山の物が展示されています。

目に留まったのは「オッパイ針」と「うぐいす徳利」。

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「オッパイ針」。…オッパイ? まったく素通りできない名前ですが、これは正式な商品名です。オッパイ的なソフトな素材の、イカ釣り専用の擬餌針で、すごくイカの食いつきが良いとか。

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うぐいす徳利。お酒を注ぐ時にうぐいすが鳴くような、すごくいい音がします。漁から戻って、家でこんなかわいい利でお酒を飲んでいたんですね。楽しそう!

 

基礎から実践をこころみる

初めの数日間は編みを練習しつつ、糸の継ぎ方、端の処理も教えていただきました。他には、ガラス玉を包む編み方(これは網針を使わずに指で放射状に編んで行く)も習いました。ガラス玉とは、昔は定置網に付ける浮きとして使っていたもので、網につなぐために紐で覆っていたのですが、現在はプラスチック製のものを使っているとのこと。

展示してあるガラス玉、照明が当たってとってもキレイです。

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2通りの編み方(コマ&網針を使う方法と指で編む方法)を習った段階で、指で編む方は目の大きさがうまく揃えられず、私にはちょっと不向きかも、と判断。そこで、網針を使う編み方に絞って何か作ってみることに。バッグ作りを想定し、手持ちのポーチに合わせて編んでみることにしました。

でも、そらあみ用の太さの紐では小物を作るのは無理がありましたか…。なんだかゴツゴツしてしまいました。初めからうまくは出来ないよ、と荒川さんになぐさめられ。

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編みの技術から作品作りのヒントを探る

ロープの処理方法もいくつか習いました。

2つのロープを1つにまとめる方法と、端っこを輪っかにして留める方法、そして端そのものをほつれないようにする方法。

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かなり苦戦しましたが、練習の結果、荒川先生に褒めていただけるものが出来ました!

これはバッグに使えるなあなどと考えて、にやにやしてしまいます。これらは、なんといっても見た目がクリーン!ロープそれ自体以外に他に何の金具も糸も使わずに出来てしまうんですから。

それと、先ほどの写真の、練習で作ったバッグとも呼べないモノを仕上げる際、持ち手を上がって行く紐が螺旋状になるのが不思議でした。

紐を編んで球状にする“あわじ玉”もなかなか難易度が高かったですが、なんとかクリア、細くて色の濃い紐でやるとかなり後悔します(笑)。

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最後の方には発展型でこれも作れるようになりました!色々覚えて出来るようになっていくのはとても楽しい体験です。

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魚々座のスゴいおじさま達

魚々座には荒川さんはじめ、一聞くと十返ってくるような沢山の知識を隠しきれないスゴいおじさま達が揃っています。

矢方(やのほ)さんがご自分でシャツに描いた絵は見逃せません。さすが魚が上手です!荒川さんとダジャレ応戦中。

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竹の扱いも漁も名人の中田さん。網針の竹や竹スプーン作りで相談に乗ってくれています。

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地元産業を支えて来た方達の知識や技術を気軽に教えていただける、というのが魚々座の素晴らしい点だと思います。東京で同じ事をしようとしたら、人も多く、もっとかしこまった場になってしまいそうです。

 

魚々座で「魚」も。

魚々座では、もしもラッキーであれば新鮮なお魚が食べられるかもしれません。おじさま達から時折いただける朝採ったばかりのヒラマサやガンドブリのお刺身。

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シメサバ。塩ver.と砂糖ver.がありましたが、砂糖でしめるとマイルドでめちゃめちゃ美味しいということを知りました。

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180cmのウミヘビが採れた日もあったり。(こちらはいただきませんでした)

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北陸の郷土料理のカブラ寿司をいただいたり。贅沢です。

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私は千葉県在住ですが、銚子や南房総から遠く離れた首都圏なので、こんな新鮮で美味しいお魚を食べる機会はあまりありません。

また、氷見の友人の実家で作った新鮮な野菜で食事が作れたり、スーパーマーケットの野菜や魚も安くて新鮮なものばかり。そういった意味でも本当に豊かな土地だと実感します。

とまらない編みと可能性

さて、編み修行に話を戻します。

もう一つ、バッグ的なものを作ってみました。

今度は細めの紐を使用したのでなんとか目は揃ってみえます。まだちょっと結ぶところの締め方が甘かったりという点はありますが、中に手持ちのポーチを入れてみると何故かジャストサイズだったので、完成形が想像できます。

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4本の紐を組んで編んでいく組紐も習い、このバッグの持ち手に使いました。

漁網の組紐は、漁師さん達が自分の道具が分かるように目印として付けていたそうです。

このような技術を使えばなんとかバッグが作れそうな気がしてきました!千葉に戻ったらきちんと作ってみようと、荒川さんの荒川商店で最後に紐各種を購入。あまりお金を使わない氷見滞在で唯一最大の買い物でした。

帰宅後に届いた荷物…。

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「漁具」!

ロマンチックなガラス玉

荒川さんからの荷物にはガラス玉も入れてくださっていました。いつか頑張って周りを編んでみようと思います。

ガラス玉、キレイですよね。

滞在中に、同じくそらあみを習いに来た氷見市内の主婦の方と仲良くなってお話したのですが、彼女は子どもの頃に海辺に打ち上げられたガラス玉を拾って部屋に飾り、海のロマンを感じていたらしいです。

彼女には親切なことに雨の日に車のない私をお風呂まで送っていただきお世話になってしまいましたが、こんな風に仲良くなれるのも、思いがけずステキな思い出が聞けたのも、地元に根ざした魚々座ならではの良さだと思いました。

魚の革を使った新たなとりくみ

また、ある時訪れたお客様は、昆布で作った網に魚の皮を貼った飾りを見せに来てくれました。

力作!

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この方は数日前にテレビで放映された、魚々座の紹介番組を見て、魚の革を使ってみようと思ったそうです。番組に出演したのは靴職人の敦賀愛ちゃん。オーダーメイドの革靴を作る一方で、なめした魚の革を使ってサンダル作りにチャレンジ中。そんな面白い活動なので、各方面から注目されています。以前ロケで氷見を訪れたみうらじゅん氏にも絶賛されたそうですよ。

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滞在中に愛ちゃんによるワークショップも開催されました。アクリル板に魚の革を貼ってアクセサリーを作るというもの。私もデータ作りやレーザーカッター作業をお手伝いしましたが、今後まだまだ面白いものが作れそう。氷見にずっと前からあった魚が最新ツールによって新しい何かになる!色々な可能性を感じます。

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また来ます。網編み&氷見!

あっという間に過ぎた16日間。

夜、電気を消した後の魚々座。なんだか去りがたいです。

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今後一緒に氷見のグッズを作ろうという話もなきにしもあらず。観光地や展覧会グッズが大好きで、もっとこういう物を作ればいいのになどと勝手に考えてしまう私としては、企画から参加できるのは非常に魅力的な話です。うまく実現できた際にはまた紹介させていただきます。今回は、魚々座という場所から、また、網を編むという作業から、氷見の魅力と未来を感じました。

最後に、氷見の皆様、大変お世話になりありがとうございました。またそのうち伺いますのでよろしくお願いいたします!