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本の世界、少しだけ味わえます。「立ち読み動画」プロジェクト!


魚々座中央には、ピカピカで大きなキッチン。そこでは、さまざまな食に関するイベントや料理教室などがおこなわれています。そして、海洋文化ラボ・海の図書スペースには、絵本や小説、料理本から学術書まで、さまざまな海の世界に連れていってくれる本がずらりと並ぶ海の図書室があります。

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食にまつわるプロジェクトを展開するアーティストEAT&ART TAROさんによって、この2つを掛け合わせた新たな食体験と本との出会い、物語を楽しむプロジェクトを紹介いたします!

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「食」から海の図書スペースをひらく

海にまつわる約1,000冊もの本を閲覧することができる海の図書スペース

▽どんな本があるか、こちらをチェック!

海の図書館

https://www.librize.com/totoza-book

面白い本が揃っていることは自信を持って言えるのですが、現状として本をじっくり読む人は少なく、絵本やマンガをパラパラとめくるくらい……。そんなようすを見ていたTAROさんから、ひとつの発案がありました。

「本棚が楽しいなと思った。でも魚々座はふらっと来る人のほうが多いから、じっくり読むというのは難しい。でもこんな面白い場所があるってことを紹介したい。ビブリオバトルっていう、本のプレゼンテーションのように、本の紹介ができたらいいな。」

「魚々座にはキッチンがある。海と食。キッチンと本を絡めたい。ふらっと来た人が、立ち読みするような感覚で本を手に取るきかっけをつくる料理動画はどうだろう。魚々座にある本からいくつかピックアップして、その動画をつくれないかな。」

TAROさんは食を通じて、本との出会いをつくりだすことはできないかと考えたのです。そこでスタートしたのが、本に登場する料理レシピを考え、再現することで、物語をちょっとだけ味わえる『1分立ち読み動画』でした。

このプロジェクトを企画したEAT&ART TAROさんとは、氷見のみりん干しを食べ比べしてみるポットラックパーティー(2013)や氷見と香川県・高松を舞台に一年を通じて食のやりとりをおこなう『食通 -Food correspondence-』(2014)といったプロジェクトをおこなってきました。他の地域では、『おにぎりのための、毎週運動会』(千葉県,2014)や『島スープ』(香川県,2013)といったプロジェクトがあります。TAROさんのプロジェクトには、高級食材も、高価な調理環境もいらない。「おいしい」と思う状況ってなんだろう?と問いかけたり、食を通じて地域について学ぶ入り口をつくっていくところが面白い。

今回『1分立ち読み動画』を制作していくにあたって「題材にする本について、いろんな人に選んでもらいたいよね」というTAROさん。この一言から、さまざまな人から好きな本を教えてもらうことから始めることにしました。

①題材にする本をワークショップ参加者で決めます。

②その本からどんな料理をつくるか、物語の背景を汲み取りながらレシピを考えます。

③実際に料理をつくります。その過程を動画撮影します。

④撮影を終えたら、その本の紹介も交えつつ約60~90秒ほどにまとめます。

⑤完成した映像は、題材にした本とともに魚々座の本棚で鑑賞できるように設置!

あなたの好きな本、なんですか?

2015年12月、ワークショップ当日。みんなで図書スペースの本を好きなように読み、気になった本を紹介し合いました。ヒミングスタッフが読んだことのない本もまだまだあり、タコの生態についてひたすら調べられている本や美しい図鑑、大男が登場するラッコの物語など、自分だけでは手に取らないような本との出会いにワクワクした時間でした。 

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本の世界を味わいながら学ぶ

そして2016年1月、魚々座キッチンで撮影がスタート!レシピの作成・調理はTAROさんが担当し、撮影はヒミング。

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レシピには、本に記載してあるものもあれば、TAROさんが物語を読んでいくなかでつくったオリジナルレシピもあるので、どんな料理が出来上がるのかドキドキソワソワ。想像するだけでお腹が空きます。撮影がはじまると、魚々座のキッチンからはいい香りが。来場者の方々も、スタッフも、その匂いに誘われてキッチンを覗きにやってきます。「何しているの?」「これ食べられるの?」と興味津々な人たちに、TAROさんが丁寧にプロジェクトと本、そしてつくっている料理についての紹介していく。 

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「いま、『民家日用廣益秘事大全』という本で触れている、《マグロのきらず和え》をつくっているんですよ。この本とっても面白いのが、江戸時代のいろいろな食材の美味しい食べ方や保存方法が書いてあるんです。例えば、「マグロは下品な魚であるが、作り身を酢に浸し、引き上げて炒ったきらずにまぶすのも江戸風である。いささかよい。」という一文。マグロってのは、今では刺身で食べるのは当たり前だけど、昔は下品なものだとされていたそうなんです。ちなみに《きらず》というのは、おからのことなんですよ。」

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TAROさんはとても楽しそうに本の紹介をしながらも、着々とその料理を仕上げていく。来た人たちは「この本はどんな本なんだろう?」と手にとり、キッチン周りで本を読む光景がたびたび見られました。

他にも、蓑島良二『とやまキトキト魚名考』(北日本新聞社)では、「漁村では米は貴重品。カツオで量増ししたご飯もあったようだ。カツオは糧や糅ぜるという意味の(カテ)から来ているらしい」という文章から、「カツオの炊き込み御飯」をつくり、かつての魚食文化を味わいながら学んだり、

インド東部ビハール州に伝わる民俗絵画の絵本、ランバロス・ジャー『水の生きもの』(河出書房新社)では、食べものの話は出てこないのですが、その地方で川魚が食べられていること、本の紙の香りにインスピレーションを受けて、スパイスの効いた「川魚のカレー」をつくりました。(ちなみに川魚は、ヒミングスタッフが川で釣ってきました!)

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「どんな状況で食べている料理なんだろう?」「物語の場所・時代では、どんな言われがあったんだろう?」といった著者や物語の背景が、この動画にはぎゅっとつまっているのです。そうして出来上がったのが、こちらです。魚々座ではまだ公開前ですが、こちらでチラリとご紹介。

・カスパー・ヘンダーソン『ほとんど想像すらされない奇妙な生き物たちの記録』エクスナレッジ

1分というわずかな時間にまとめられた動画を観終えたあとは、その物語のはじまり、行く末を知りたくなります。ここで撮影した動画は、3月中旬ごろから海洋文化ラボにて公開予定です。魚々座での新しい本との出会いをお楽しみください!

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