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カブスゲストノート 氷見の夏と海


こんな早く戻って来るとは、思っていなかった。

 

3月に、以前参加したローカルライト の第4回目を冷やかしに訪れた氷見。参加者ではなく、OGという気楽な立場だったから、SNSでのレポートや記事に使う写真を撮りつつ、人々と話し散歩に出かけるという、楽しい日々をすごした。その時は英語で氷見の印象を書いたが、2度目の氷見は、日本語で綴ってみようと思う。

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ローカルライトのワークショップが終わってから大阪に戻って8月まで、あっという間に過ぎた。何がなんだか分からないくらい色々な仕事をして、次々巡ってくる屈辱や充実感や高揚感を味わって、わたしはそろそろ疲れていた。

7月の終わりに、柳島さんから連絡をもらった時、わたしは予定していた海外旅行が流れたばかりだったのもあって、その誘いを一度脳みそに通して熟考することもなく、承諾した。

8月の半ばも過ぎた頃、わたしたちの訪れた氷見は快晴だった。夏であってもこんな快晴は富山には珍しいことらしい。これ幸いと車の窓を開けて立山連峰に挨拶をし、潮風を味わう。

今回氷見を訪れた大きな目的に、地域おこし協力隊として氷見に来た左座さんが始めた店を訪れる、ということがあった。

左座さんは3月のローカルライトにて美味しい魚料理を振る舞い、わたしたちと氷見に住む人々をつなげる場を作ってくださった方だ。

私たちは漁場を直接見ることはできなかったから、左座さんの持って来た魚を通じて、氷見の海の中を想像した。ごく新鮮だからこそできるイワシの刺身を味わいながらふけていった夜は記憶に新しい。わたしはこの店のクラウドファンディングに出資したのもあって(正直にいうと、純粋に応援したいという思いと同時に、リターンの干物につられたのだ)、是非行ってみたいと思っていた。

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左座さんの始めた地魚料理店は、もともと民宿だった建物でひっそりと営まれていた。

「夏だから魚がいない、今日は海鮮丼だけだ」とぼやきながら、タイの子やらシイラをさばく左座さんは、前よりも生き生きしていた。市場価値がつかないからと海の資源が廃棄されることへ感じていたモヤモヤに、左座さんはこの小杉前という店から応えようとしている。海鮮丼は、もちろん、めちゃくちゃ美味しかった。セットのうしお汁もめちゃくちゃ美味しかった。美味しくて写真を撮り忘れた。文章を書き写真を撮る者が言っていいことではないのかもしれないが、どうせ味は文字でも写真でも伝わらない。だから、ここで細かく描写して無意味に人を羨ましがらせる無粋な努力はしないでおく。ぜひたくさんの人にこの店を実際に訪れてほしい。

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そういえば、前に来た時はまだ寒くて空もどんよりとして、海に入るどころではなかった。この天気を逃すわけにはいかないと、砂浜へ向かう。

日本海に自分の身を浸すのは、思えば人生初めてかもしれない。そんなことを思いながらシュノーケルをつけて、海に入る。ひんやりとした感覚を予想していたのにもかかわらず、あたたかい。岩場の上を通り過ぎれば、岩ガキやウニがそこかしこにみえる豊かな海。対馬海流のもたらす恵みを自分の目をもって認識した。

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ビーチコーミング、という外来語をご存知だろうか。”Beachcombing” =「ビーチ」「くしけずる」、と書く。つまり海岸で、漂着した色々な素敵なものを拾って歩くことだ。わたしたちの訪れた海岸[名前を忘れました]は角の削れたガラス片や陶器片が流れ着く場所だった。丸みを帯びた乳白色のガラス片、しかし一つとして同じではない。どこかの人間が捨てた用済みのガラスゴミが、辿り着いた海岸でまた人間の愛でる対象になりうる、その事実にわたしは熱中した。そして、半分乾いた身体に吹き付けるひやりとした風を感じて我に帰ると、もう夕刻が近づいていた。ありがとう氷見、もう帰らなければ。でも元気になったよ。

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今は、都会での日常が惜しくて捨てることができない。自分を激流の中に晒してやりたいことがたくさんある。しかし、都会の評価軸の範疇にいると、どうしても必死で自立しているのに疲れてくる。そんな時には、自然の中へ逃げ帰る。自然の造形物の中で生き物として過ごす時間は、少なくともわたしにとっては必須だ。都会に居を定めているわたしにとっても、この氷見というまちは心地よい。それは、氷見の人も自然も、よそ者のわたしを「ああ、よくきたね」と寛容に受け入れてくれるから。真に「夏休み」という言葉に当てはまる時間を過ごして、滋養を得た。またしばらくは頑張れそうだ。

nami

 

カブスゲストライター : Haruka Tonegawa (大阪、フォトグラファー・ライター)