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〔氷見おんな酒場放浪記 vol.2〕ひみつカレーのひみつのお話 仲有紀氏(ひみつカレー店主) (第2回 /全 たぶん3回)


私は某TV番組のファンである。

ここでは、番組に敬意を払いつつ、そんな酒場で誰かに少し話をしたくなるようなことを綴れればという思いで、このタイトルとした。

 

前回の記事はこちら

大事故を経験し、好きなことを仕事にしようと、心に決めた仲さん。

舞台や写真など、芸術が好きで選択してきたはずのこれまで道のりは、まだカレーとは繋がっていないようです。

 


 

 「忘れもしない、11月の仙台は寒かった」

やっぱり、自分は子どものころから舞台が好きで芝居が好き。

そういうことに関わる仕事がしたいと思い、またおもむろに求人誌を手に取った。

すると、ホテルの宴会場の裏方の求人が目についた。結婚式の主役にピンスポットを当てる照明役も、ここで初めて経験した。でも半年ほどで、やっぱりなんか違う気がして、辞めた。『とりあえず、いろんなことをやってみたいって感じで。でも、なんかフラフラしてたよね。』再び、求人誌を手に取った。

すると、今度は奈良県にグランドオープンする大手シネマコンプレックスのマネージャー職の求人が目についた。

映画館で一度働いてみたいとは思っていたので、これぞと思い応募したところ、首尾よく採用されることとなった。仲さんと同じマネージャー職5名。アルバイト80名。奈良でまた新たな生活が始まった。

仕事は、主にアルバイトの教育係。こちらが目を光らせていないと、売り物のポテトフライをついついパクついてしまう人、面接の履歴書の顔写真がプリクラのシールの人、はたまたイヤホンを付けたままの証明写真を貼ってくる人などなど、超個性派揃い。こんな状況にも関わらず、仲さんは、『アハハ!面白いよね!』と、笑いながら仰った。

 

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どんな状況でも、いつもニコニコと笑顔でツッコミながら、日々を楽しんで過ごしてきた、仲さん。

ところが、せっかく新しい環境に慣れてきたにも関わらず、たった半年で仙台の店舗に転勤辞令。このタイミングで仲さんは、初めて地元関西を離れることとなった。

『あれは忘れもしない、11月の仙台は、寒かったです。』

東北の厳しい寒さに耐えかねてではないだろうが、仲さんは間もなく結婚の道を選び、しばらく仕事から離れることとなる。その後、数年の東京暮らしを経て、ついに氷見の地に辿り着くことになった。

 

と、ここで、都会に住んでいた頃、美味しいカレー店に通っていたのですかと伺ってみた。

『カレーは全然食べてなかったねえ。お父さんにも一回も連れてってもらわなかったし、たまにレトルトとか普通のルーのカレーを食べることはあったけどね。』

仲さん、このとき27歳。まだまだカレーへの道は、遠い。

 

「今考えると、私の基礎になっている」

氷見での新生活が始まった。

一人目の子を妊娠しているとき、新しい土地で何か面白いことはないかと、いろんなところに出向いていた。

ある日、いつものように高岡市立図書館に行くと、生涯学習センターで『世界の食卓』という、様々な国の料理レシピから食文化を学ぶオープンカレッジが開校されていた。時間と体力がとにかく余っていたこの頃、思い立って参加してみた。この時、ふと、ある中学校の頃の記憶が蘇ってきた。

『そういえば、中学生のとき、おこずかいを貯めて、友達が買っていたようなmcSister(※)じゃなくて、レタスクラブとオレンジページを愛読してたんですよね。おいしそうやなあ!こんなんあるんや!って眺めるのが好きでね。今考えると、結構役に立っているというか。あれが今の私の基礎になってるんだなって思うな。』

※ mcSister…10代少女向けファッションを主とした月間情報誌。(wikipedia参照)

 

グルメなお父様にあちこち連れられ、いろんな国の食文化に自然と興味を持つ子だった、仲さん。レシピを眺めながら、この料理には、この調味料が入ってるんだ!これが入ったらどんな味にあるんだろう!と、ワクワク想像を膨らませていた少女時代が、現在のスパイスカレーへの道に繋がった。

 

店内に置かれたスパイスの本たち。決心したらとことん突き詰める性格の仲さん。実はスパイス&ハーブ検定の1級保持者でいらっしゃいます。
店内に置かれたスパイスの本たち。決心したらとことん突き詰める性格の仲さん。実はスパイス&ハーブ検定の1級保持者でいらっしゃいます。

 

そしてちょうどこの頃、仲さんは一冊の本と出会った。

『今でも覚えてるけど、図書館で借りた本の中に、喜八さんに、カレーを習うってのがあって。それを見て一回だけ、スパイスのカレーを作ったのね。とにかく時間があったし、家族もカレー好きだしってことで。そしたら、一口食べて、「なにこれお店の味がする!」ってびっくりして!』

仲さんのスパイスカレーの基礎は、実はフレンチの世界的巨匠である、熊谷喜八氏のレシピだったのだ。

と、ここでそのカレーがきっかけで、スパイスに魅了されたんですかと伺ってみた。

『ううん、全然。』と、仲さんは笑顔できっぱりと仰った。

 

ついに氷見にたどり着いた、仲さん。初めてスパイスでカレーを作ってみたが、ピタッとそれっきり。

それから二人の子の子育てに、日々忙しく追われ、あっという間に月日が流れた。子どもたちが保育園に入園し、少し時間に余裕ができた頃、ここで人生初のハローワークに出向いてみた。

 

 「私、ついにしたんです。人生の棚卸し。」

氷見の保育園の給食スタッフの求人が目についた。料理はずっと好きだったので、この職にどうしても就きたかったが、人気職で間に合わなかった。

『絶望しましたね。もうやりたい仕事が氷見にはなくて。だから、私もついにしてみたんです。人生の棚卸しというものを。』

これまでの人生を振り返り、自分が、何が好きで何が嫌だったのか。本気で立ち止まって考えてみた。これは最後の仕事にしなあかん。そう思って考えた。接客業は自分にとってすごく楽しい仕事。寧ろムダ話がしたい。

自分のやりたいことを棚卸しして、整理した。

  • 接客が好き
  • 料理が好き
  • お昼だけ働きたい
  • 土日を休みにしたい
  • そもそもそこまで働きたくない

そんな条件のところは、氷見にはない。

『だから、自分でやることに決めたんです。』

好きな働き方をしたい。そしたら、氷見になかった。ただそれだけ。

仲さんの選んだ道。なんだか、グッと動きそう。

 

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皆さま、お待たせしました!

次回、やっと本格的にカレーが登場します!乞うご期待!(笑)

 

ここからのストーリーは、また次回に綴ることとします。

 

 

photo by hiroko takeda